やる気が出ない、人間関係がうまくいかない……。こんなちょっとした不調は、生活習慣の乱れによる睡眠の質の低下に原因があることも多いものです。
眠れなくなると疲れも取れず、メンタル面でもリフレッシュできません。そのまま無理をして仕事を続け、うまくいかず自信をなくすという悪循環に陥ってしまうのです。
仕事量が多く、拘束時間が長いことが多い現代のビジネスパーソン。自分の生活習慣は自分でととのえなければならないのが現状です。
睡眠の質をよくする食事や運動のコツ、ストレスとのうまい付き合い方を「ねむり家」店主で睡眠健康アドバイザーでもある大郷卓也氏に教えてもらいました。
快眠にいい食事、悪い食事を知っておこう
外食が増えて砂糖など体を冷やす食材を大量に摂取していることも、睡眠の質の悪化につながっています。
快眠のためには食事にも気をつけたいものです。
快眠のためにおすすめしたい食材は、納豆、塩こうじ、キムチなどの発酵食品です。体をあたためて快眠をサポートするだけでなく、胃腸の環境もととのえてくれるので、生き生きと過ごせるようになります。
寝酒も適量を楽しく飲む程度であればいいのですが、飲まないと眠れないとなると危険です。
週に2日はお酒を飲まない日をつくるなど、内臓を休ませてあげましょう。

タバコやコーヒー、快眠にはやっぱりNG?
タバコやコーヒーが好きな人は、これらの嗜好品が眠りに与える影響も気になります。結論からいうと、タバコは血流障害を引き起こす可能性があり、コーヒーは体を冷やす作用があるので、やはり快眠にはあまり好ましくありません。
これらに限らず、嗜好品のとりすぎは体によくありません。体がタバコやコーヒーを欲するのはストレスによるところも大きいので、快眠できるようになれば自然と不必要な摂取はなくなる傾向にあります。
まずは生活習慣や睡眠環境をととのえて、睡眠の質を高めることが健康につながります。
適度な運動は血流をよくして快眠に貢献しますが、やりすぎは逆効果です。最近ではランニングのブームで口呼吸が習慣化され、かえってイビキをかくようになったり、眠りが浅くなったりという方が多くなっています。
激しい運動は口呼吸を習慣化するだけでなく、交感神経を活発にして目を冴えさせてしまいます。数十分程度の軽いウォーキングをする、バスや電車に乗るところを自転車に変えてみるなど、無理のない運動をおすすめします。
睡眠の質がよくなると、ストレスも自然と解消する
「考えごとをして眠れない」というお悩みをよく聞きますが、実は厳密にいうと間違いです。考えごとがあるから眠れなくなっているというよりは、睡眠の質が悪くなっているから嫌なことや悩みを悶々と考えてしまうというほうが正しいからです。
毎日規則正しい生活を送り、睡眠環境をしっかりととのえられるようになれば、おのずと睡眠の質は上がり、5分以内に眠れるようになるでしょう。
大郷氏のもとに相談にこられた大手企業にお勤めの40代の男性も、ストレスによる睡眠障害に悩まされていました。眠れない日々が続き、ついには精神疾患になって薬を服用するようになったそうです。
薬により夜間の運転も制限され、仕事では他人の評価や噂が気になり、人間関係も最悪の状態になってしまいました。ストレスは限界に達し、仕事も長期に休むことになったタイミングで相談にこられました。
お悩みは深いものでしたが、私がアドバイスをさせていただき睡眠の質を改善したところ、半年で仕事に復帰され、お薬の量も減ったのだそうです。悩みがあるときほど、悩みそのものと同じくらい睡眠にも目を向けるべきだという好例です。
生活のリズムを大切にし、睡眠の質を上げることでさまざまなメリットがあります。この機会に一度睡眠について考えてみましょう。
「ねむり家」店主/睡眠健康アドバイザー
大郷卓也(おおごうたくや)
1973年3月13日富山県生まれ。中学生の時、原因不明の難病にかかり、長年にわたる闘病生活を経験。睡眠の質を高めることで病を完治させる。東京布団技術学院で布団職人の国家資格を取得して、創業から108年続く家業の寝具店「ねむり家」nemuriyaを継ぎ、眠りに悩む人に寝具の選び方や安眠の方法についての相談を受ける。
その傍ら、2007年に、医師やカウンセラー、スポーツトレーナーなどと「ぐっすり眠る会」を設立。眠りの勉強会や講演会を主催して、心と身体を芯から癒す眠りの知識を広める講演活動をしている。知識だけではなく、肩こりや腰痛を寝ながらにして改善させる、寝返り体操や肩回し体操などの実践の体操の指導、睡眠環境や食べ物、ライフスタイルのアドバイスまでして、知っているようで知らない眠りを伝えている。ぐっすり眠れるように導き、心と体が元気になる講演内容。
また、テレビ局からの取材にも丁寧に応じ、NHKの「サキどり」、フジテレビの「アゲるテレビ」、「とくダネ」など番組を通して、全国に眠りの大切さを啓蒙している。
「ねむり家」ホームページ : http://www.nemuriya.net
著書『100年続く老舗寝具店の店主が教える 最高の眠り方』(総合法令出版)発売中