腸内環境で性格まで変わる!? 健康管理に役立つ「脳腸相関」の考え方

私たちの心と身体は密接につながっているというのは、よく言われています。それをわかりやすくあらわす言葉の一つが、江の島弁天クリニック院長の松村浩道先生が重視する「脳腸相関」です。

腸内環境を整えることによって、アレルギーやガンの症状を改善することも可能なのだそうです。

今注目されている脳腸相関の考え方と最新の治療法について、松村先生に教えていただきました。

脳と腸は互いに影響を及ぼしあっている


人の腸内には600兆個以上の細菌が存在していて、その種類や数は人によって違います。

それによって太りやすいかどうかや糖尿病になりやすいかどうか、場合によっては性格までも左右すると言われています。

筒のような円筒状の物の上にネズミを乗せて、降りるまでの時間を測定するという動物実験が行われました。小さな筒でもネズミのサイズからすると飛び降りるのにはちょっと勇気がいる高さですから、降りるまでの時間が短ければ短いほど好奇心が旺盛で、長いほど消極的な傾向にあるということになります。

この実験で活発だとされたネズミの腸内フローラを、消極的なネズミの腸内に入れてみたところ、なんと筒から降りる時間が短くなったのです。

人の場合でも、うつ病の患者さんの腸内細菌と健常者の腸内細菌を比べると、前者のほうが乳酸菌やビフィズス菌といった善玉菌が少ないということがわかっています。

これらは腸内フローラが性格に影響していることを示す事例として、広く知られています。

一方で、ストレスが腸内環境に大きな影響を及ぼすということもわかりつつあります。

たとえば宇宙飛行士の腸内では、善玉菌が減って悪玉菌が増えているということがわかっています。宇宙飛行士は、私たちが想像するよりもはるかに過酷なストレスが加わるような環境下で仕事をしていますが、過剰なストレスが、腸内環境を変化させてしまうわけです。

私たちの体内では、ストレスが加わると「アドレナリン」という神経伝達物質が分泌されます。大腸菌をはじめとする悪玉菌の中には、アドレナリンに反応してその数を増やしたり、病原性を増す受容体があることがわかっています。

脳と腸は互いに関連しあい、影響を及ぼしあっているということです。

腸内環境を整えることで、ガンや糖尿病の症状も改善できる


私はオーダーメイドの乳酸菌を処方していますが、それはその人に最適な腸内フローラをつくるためです。

今までの話で言うと、その人にベストな腸内環境というのは100人いれば100通りあります。巷では「腸内環境を整える」という触れ込みのヨーグルトや飲料などが売り出されていますが、たまたま体質に合う人には効果が出ても、合わない人にはまったく効果が出ないでしょう。

本来はオーダーメイドでないと対応できないはずなのです。

その人に最適な状態に腸内環境を整えることによって、アレルギーや生活習慣病を予防、改善することもできます。

たとえば、アレルギー疾患の原因の一つに「免疫のアンバランス」があります。免疫機能の司令塔的な役割を果たすヘルパーT細胞の中には「Th1」と「Th2」という細胞がありますが、アレルギーの方はTh2が優位になっていて、Th1が少ない傾向にあるのです。

このTh1はいろいろな細菌やアレルゲンと触れることによって成長していくものなのですが、最近の子どもは、過度に衛生的な環境で育つことが多いためTh1が成長しにくくなるという、「衛生仮説」といった考えがあります。

そこで私たちは、Th1の力を高める働きをもつインターフェロンガンマ(IFN-γ)という物質に着目しました。

IFN-γは一部の乳酸菌によって増やすことができるのですが、どの乳酸菌がもっとも効果的であるかは人によって違いますので、非常に精度の高い免疫学的測定法で測定し、導き出された種類の乳酸菌をカプセルに入れて飲んでもらいます。

ガンも同様に、IFN-γを増やす乳酸菌を服用することで、ガン細胞に対するNK細胞の攻撃力が増します。

一方、IL-10という物質の力を高める乳酸菌をチョイスすることで、高血圧症、糖尿病、動脈硬化症などの原因となる炎症が抑制されるのです。

いまやこれらの慢性炎症と関わりがない疾患はないのではないかとまで言われているので、そう考えると適用疾患というのは非常に多くなるのだろうと思っています。

江の島弁天クリニック 理事長・院長

松村 浩道(まつむら・ひろみち)

1966年生まれ。医療法人社団藍風会 江の島弁天クリニック理事長。米国ストレス研究所日本支部代表。日本医科大学卒。同大学附属病院麻酔科、氏家病院麻酔科・精神科を経て現職。痛みの治療に携わり全人的な医療を志す過程で、精神医療、東洋医学、栄養療法、温泉医学、その他補完代替医療に通じ、現在はさまざまな不調をかかえる方に対して、心身相関を重視した包括的な診療を行っている。大東流合気柔術免許皆伝。

「脳腸相関」についてもっと知りたい人におすすめ!

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