第8回 「正しい食事の形」とは?(基礎編)

竹並恵里 博士
東京大学社会連携講座 特任研究員
博士(学術)
管理栄養士
健康運動指導士
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皆さんにとって「普通の食事」とはどんなものですか?

食事という行為は、毎日当たり前のように行っているため、自分の食事こそが「普通」の食事であると思い込んでいる方が実はとても多いのです。

例えば栄養相談の場で「いつもどんなお食事を召し上がっていますか?」とうかがうと、多くの方が「普通の食事です」とまず答えられます。

しかし詳しくその内容を聞き取ると、問題が潜んでいる場合がほとんどです。実はこの「普通」の思い込みが、自身の食事の問題を気づかせにくくし、事態を深刻化させてしまう要因です。

「普通の食事」=「正しい食事」とは限りません。ここに気づくことが、「健康づくりのための栄養学」におけるファーストステップです。

今回はこの「正しい食事の形」についてご紹介しましょう。

食事の役割


「正しい」を定義するのはなかなか難しいことですが、その意味を「本来あるべき姿、基本となる」と捉えると、その食事が「食事の役割」をきちんと果たしているかどうかが一つの判断基準になるはずです。

では、食事の役割とは何でしょうか?

食事には、「栄養学的側面」「QOL(Quality of Life:生活の質)や社会性を高める側面」の2つの役割がありますが、栄養学的側面に絞ってお話をすると、その役割は、①エネルギー源、②体づくりの材料、③コンディショニングの3つにまとめて考えられます。

食事の役割(栄養学的側面から)
① エネルギー源:生命維持・活動を行うためのエネルギー源を供給する
② 体づくりの材料:体の各部位の新陳代謝に必要な材料を供給する
③ コンディショニング:体の調子を整える

①~③は全て食事でしか担うことができない役割ですが、これらがきちんと果たされないと、人は健全な生命活動を維持することができなくなります。

つまり、不調を招いたり、病気を発症したり、最悪死に至ったりすることも起こり得ます。飽食の現代では、食事のこの3つの役割が忘れられがちですが、食事を毎日摂る理由は、本来、ここにあるのです。

正しい食事の形(=食事の基本の形)


したがって、この3つの役割を果たせる食事を具現化したものが「正しい食事の形」=「食事の基本の形」と考えられます。

実はそれが、皆さんも一度は耳にしたことがある「主食・主菜・副菜が揃った食事」となるのです。

よく聞くお話なので、なんだ…とがっかりされた方もいるかもしれません。しかし、これこそが、食事における様々な問題を解決に導くための重要な土台となります。

ところが、栄養相談をしていると、「主食・主菜・副菜」の言葉は知っていても、その重要性まで理解されている方は少なく、それ故に実践できている方もわずかな現状を痛感します。

これは一言でいうと、「とても勿体ない!」状況なのです。では、改めて「主食・主菜・副菜」について、該当する食品と主な役割を下のイラストにまとめてみましょう。

「主食」とはエネルギー源になる栄養素を多く含む食品群、「主菜」とは体づくりの材料になる栄養素を多く含む食品群、「副菜」とはコンディショニングに必要な栄養素を多く含む食品群(からなる料理)で、それぞれ栄養学的特徴が違うため担う役割も異なります。

つまり、「主食・主菜・副菜」が揃って初めて3つの役割も果たされる、しかし、一つでも欠けると役割が十分に果たせなくなってしまうわけです。

そのため、(時々なら大きな問題になりませんが)そのような食事を「頻繁」に「摂り続けて」しまうと、様々な健康問題を生じることになってしまいます。

逆を言えば、具体的な栄養素まで覚えなくても、①食品をこの3つのグループに分けて整理し、②食事の際に3つを揃える、これを実践するだけで、食事の3つの役割がバランスよく果たされるようになり、多くの食事問題が解決に向かっていくことになります。

栄養学に限らず全てに共通していることですが、「土台=基礎」ができていない条件では何を試してもなかなか上手くいきません。流行りの食事法を取り入れる前に、土台をしっかり固めておくことが、実は一番近道です。

これまで「普通」と思っていた自身の食事を「主食・主菜・副菜」が揃っているかという観点でもう一度、見てみてください。3つのうち何が不足しているか、また、不足があるということは逆に過剰なものが生じている可能性が高くなります。

「正しい食事の形」を知ることで、バランスの乱れを初めて自覚でき、自身の食事の弱点・問題点が分かるようになり、そして自ずと、効果的な解決法が見えてくるはずです。