第21回 筋育栄養学的!「副菜」の取説:食物繊維を上手に摂るには?(前編)

竹並恵里 博士
東京大学社会連携講座 特任研究員
博士(学術)
管理栄養士
健康運動指導士
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筋肉づくりに熱心になるあまり、タンパク源となる「主菜」に意識がいってしまい、「副菜」を軽視してしまうケースがあります。しかし、「副菜」は健康維持に欠かせないため、副菜不足での筋育は将来の健康投資にはなりません。また副菜を摂っているつもりでも、摂り方に「偏り」がある人もいます。どのような摂り方が良いのでしょうか?

日本人の野菜摂取量の現状は?


令和元年国民健康・栄養調査によると、一日の野菜の平均摂取量は、成人男性で約290g、成人女性で約270gと報告されています。男女共に20代が最も少なく(男性約230g、女性訳210g)、年齢があがるにつれ摂取量は増える傾向ですが、どの年代も「健康日本21(第二次)」が目標値として掲げる「1日350g以上」には届いていません。

野菜は体に良いということは理解していていも、実際に毎日350g以上摂取できている方には、栄養相談をしていてもなかなか出会うことはありません。平均値では、目標値に70gほど不足しているものと考えられます。ちょうど、ほうれん草のお浸しなら一人前分です。

野菜の栄養的意義とは?


そもそも、野菜の栄養的意義とはどんなものでしょうか?その機能をまとめると次の3つが考えられます。

 ①ビタミン・ミネラル・食物繊維の供給源
 ②様々なフィトケミカルを含んでいるため各種疾病のリスクを低下させる
 ③カロリーや脂質が少ないため、肥満予防につながる

①の機能から、野菜が不足すると当然、多くのビタミンとミネラル、そして食物繊維不足に陥ります。このため、野菜の代わりにサプリメントで補っている方、そしてサプリメントを摂っているから野菜不足でも大丈夫と思っている方も多いことでしょう。

しかし、サプリメントは野菜を食べることの代替えにはなりません。そう考えられる大きな理由は、②と③の機能にあります。

②の「フィトケミカル」とは、野菜に含まれる機能性成分の総称です。フィトケミカルは植物が紫外線などの有害物質から身を守るために作り出したとされる成分で、色素や香り、苦味の元です。ポリフェノールやリコペン、カロテンなどが有名です。

これらは共通して強力な抗酸化力(活性酸素による酸化の害を防ぐ力)を持つことから、癌や心疾患などのリスク低減効果が期待できます。フィトケミカルは現在分かっているだけでも何百種類以上にも及ぶうえ、未知のものも数多く存在するとされています。

よって、これら成分はサプリメントで単独で摂るよりも、様々な成分をまとめて含む食品の形で摂取した方が、「相乗作用」も期待でき効率が良いと考えられます。

さらに③の機能は、サプリメントでは決して得ることができないものです。低脂肪で低カロリーの野菜は、日常の食事においてカロリーの過剰摂取を防ぐ大事な効果を担っています。また食物繊維が豊富なため、腹持ちをよくしたり、食事での咀嚼回数を増やしたりし、食事の満足感を高めます。野菜による「食事のかさ増し」なくして、肥満の予防・改善はできないのです。

続き……第21回 筋育栄養学的!「副菜」の取説:食物繊維を上手に摂るには?(後編)