
竹並恵里 博士
東京大学社会連携講座 特任研究員
博士(学術)
管理栄養士
健康運動指導士
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第20回 筋育栄養学的!「主菜」の取説:タンパク質の必要量は?(前編)の続き……
タンパク質含有率の違いを知ろう
主菜となる「肉・魚介類・卵・大豆製品」はいずれも、高タンパク質食品ではあるのですが、それぞれタンパク質含有率は異なります。各食品のタンパク質含有率を知っておくと、先ほど算出したプラスしたいタンパク質量を摂るために必要な食品量を考える際に便利です。
主菜食品および乳製品のタンパク質含有率 ・肉・魚介類:15~25% (一食分100gとして20g前後) ・卵:12%(1個50gとして約6g) ・大豆製品 豆腐:6%前後(一食分100gとして約6g)、 納豆:15%(1パック40gとして約6g) ・乳製品 牛乳・ヨーグルト:約3%(牛乳コップ1杯200mlとして約6g) |
肉・魚介類はタンパク質含有率が高いため効率の良い供給源となります。ただし、高脂肪になるほどタンパク質含有率は下がるため、特に肉を選ぶ際はできる限り低脂肪のものを選びましょう。
一方、卵と大豆製品はタンパク質含有率が低めなため、単品ではなく組み合わせて摂るのがおすすめです。
また主菜の他に、乳製品もタンパク質供給源となる食品です。タンパク質含有率は主菜食品よりも低くなりますが、一回に摂取できる量が多いため、タンパク質をまとめて摂ることができます。「一日3回の主菜+1回の乳製品」を基本にすることで、タンパク質の必要量を確保しやすくなります。
何を選ぶ?大切なのは「多様性」!
筋育のためにタンパク質摂取量を増やす場合、多くの方が肉の摂取を増やしがちです。前述した通り、確かに肉は効率の良いタンパク質供給源となりますが、食品選びでもっとも重要な視点は「多様性」です。
近年、様々な分野で耳にする言葉ですが、栄養学の分野でもこの「多様性(=色々なものをバランスよく)」がもたらす健康効果に改めて注目が集まっています。食品はそれぞれ栄養学的特徴が異なり、どんな食品にもメリットとデメリットが存在します。このため、特定の食品に偏った摂り方が続いてしまうと、様々な不調や病気を招きやすくなってしまうのです。
例えば、ミドル世代の主菜の摂り方には「肉が多く、魚や大豆製品が少ない」という偏りが見られます。肉には悪玉コレステロールを上げやすい飽和脂肪酸が含まれるのに対し、魚や大豆製品には生活習慣病予防に効果的な栄養素が豊富なため、このような偏りはミドル世代の生活習慣病発症リスクを増加させてしまいます。
一方、シニア世代におけるフレイルやサルコペニア問題の背景には、効率の良いタンパク質摂取源である肉を極端に減らしてしまうことで、タンパク質の必要量の確保が難しくなっていることが挙げられています。
主菜の摂取量を増やす際は、自身の食生活を振り返り、足りない食品をプラスするという視点で考えてみてください。偏りのない多様性のある食材選びこそが健康的な筋育を実現してくれるはずです。