第20回 筋育栄養学的!「主菜」の取説:タンパク質の必要量は?(前編)

竹並恵里 博士
東京大学社会連携講座 特任研究員
博士(学術)
管理栄養士
健康運動指導士
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筋肉の直接的な材料となる栄養素はタンパク質ですが、食事におけるタンパク質の主要な供給源は「主菜」となります。このため、主菜抜きの食事は筋育には致命的です。では、健康的な筋育のためには、主菜をどのように摂ったら良いのでしょうか。

一日に必要なタンパク質量は?


第17回講義(「エネルギー産生栄養素」バランスとは?)で、一日のタンパク質の摂取目標量はエネルギー比率で13~20%エネルギーと紹介しました。しかし、筋肉をはじめ体の構成材料となるタンパク質は体のサイズによって必要量が変わるため、体重ベースで考えることも重要です。

『日本人の食事摂取基準(2020年版)』では、体重1kg当たりの一日の必要量は約1g(約1g/kg)と考えられています(ただし高齢者は除く)。例えば、体重60kgの方なら一日約60g必要となります。

一方、現在の日本人(成人)におけるタンパク質摂取量の平均値は、令和元年国民健康・栄養調査の結果から、男女ともに約1.2g/kg(男性:1.17g/kg、女性1.24g/kg)と算出され、1g/kgの基準はクリアしているようです。

しかし、1g/kgという数値は、今ある筋肉を減らさないための最低必要量と考えられ、筋肉を増やすためにはもっと多く摂取する必要があります。各学会が発表している、筋育のために一日に必要なタンパク質摂取量は下記のような数値となっています。

 ・国際スポーツ栄養学会:1.4~2.0g/kg
 ・アメリカ栄養学会:1.4~1.8g/kg
 ・アメリカスポーツ医学会:1.2~2.0g/kg
 (*トレーニングをしていることを前提とした数値)

全て幅を持たせて設定しているのは、トレーニング量や摂取エネルギー量、トレーニング歴などにより必要量が変わってくるためですが、仮に、筋育のためのタンパク質必要量を1.5g/kgとして考えてみましょう。

国民健康・栄養調査の結果を踏まえて、現状1.2g/kgのタンパク質を摂取できているとすると、あと0.3g/kg(=1.5 g/kg -1.2 g/kg)分のタンパク質を増やせば良いことになります。例えば、体重60kgの方なら18g(=0.3g×60kg)に相当します。このように増やすべき数値を算出することができたら、次は、何をどのように食べたら良いかを考えていきます。

主菜は毎食!不足しやすい朝食にプラス


食事の基本構成は「主食+主菜+副菜」となりますが、このうちタンパク質の主要な供給源となるのは「主菜」です。主菜に該当する食品には「肉・魚介類・卵・大豆製品」が挙げられます(第13回講義「栄養素の働きと3大栄養素について」参照)

<主食・主菜・副菜から摂れるタンパク質量の目安>

主菜を一人前食べることで、タンパク質を約20g摂取することができます。一方、主食・副菜から摂れるタンパク質量はわずかなため、主菜抜きの食事では十分なタンパク質量を確保することは難しいことが分かります。

筋育を成功させるためには、主菜を毎食しっかり摂ることが何よりも重要です。特に、忙しい朝食では主菜が不足しがちです。多くの調査研究から、一日3食のなかで最もタンパク質摂取量が少ないのは朝食であることが報告されています。筋育のためにタンパク質摂取量を増やす際は、ぜひ不足している朝食にプラスしましょう。

続き……第20回 筋育栄養学的!「主菜」の取説:タンパク質の必要量は?(後編)