第13回 筋育栄養学の基礎知識:栄養素の働きと3大栄養素について(後編)

竹並恵里 博士
東京大学社会連携講座 特任研究員
博士(学術)
管理栄養士
健康運動指導士
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筋育栄養学の基礎知識:栄養素の働きと3大栄養素について(前編)の続き……

3大栄養素の基本情報


今後はこちらの教室でも、様々なテーマを深堀りするため栄養素にも触れながらお話をしていきます。そこで次はその予備知識として、3大栄養素に関する基本情報を紹介しておきましょう。

■ 糖質:エネルギー源

食物繊維とともに炭水化物に属しますが、エネルギー源となるのは、人が持つ消化酵素で消化(=分解)でき小腸から吸収される糖質のみで(食物繊維は消化されない)、そのエネルギー量は1gあたり4kcalです。体と頭、瞬発的場面と持久的場面といったように対象や状況を選ばずマルチに活躍できる重要なエネルギー源です。糖質は構成糖の数により、以下のように分類されます(カッコ内は構成糖の数と多く含む食品)。

①単糖類(1個:飲料や菓子などに使用される甘味料 ) → 糖類に分類される
②二糖類(2個:砂糖)→ 糖類に分類される
③多糖類(たくさん:米・小麦などの主食に該当する食品)

糖質は全て単糖類にまで消化されてから吸収されるため、消化吸収速度は、構成糖の数が少ない糖類は速く、数が多い多糖類(でんぷん)は遅くなります。

消化吸収速度が速いとその後の血糖値も急上昇しやすいため、糖類を過剰に摂取すると、インスリン(血糖値を下げる唯一のホルモン)を分泌する膵臓や血管に負担をかけたり、肥満を招きやすかったり、精神的に不安定になったりなど健康面で様々な問題が生じやすくなります。

脂質:エネルギー源、体づくりの材料

脂質には、中性脂肪、脂肪酸、コレステロールなどが属します。食品中の油脂は中性脂肪の形で存在し、その中性脂肪の主成分は脂肪酸です。生み出すエネルギー量は糖質の倍以上となる1gあたり9kcal。少量でも大きなエネルギー量を生み出せる効率の良いエネルギー源であると同時に、体脂肪やホルモン、細胞膜などの材料としても重要な栄養素です。

以前はそのエネルギー量の高さから総じて「ダイエットの敵」と考えられがちな栄養素でしたが、近年は、「控えたい脂質」「摂りたい脂質」に分けて考え適量範囲内で摂取することが勧められます。そのような脂質の良し悪しを決めるのは脂肪酸の種類です。

脂肪酸は、その構造中にある炭素同士の二重結合の数(や位置)により、以下のように分類されます。(カッコ内は二重結合の数と多く含む食品)

①飽和脂肪酸(0個:肉・乳製品)
②一価不飽和脂肪酸(1個:オリーブ油・こめ油など)
③多価不飽和脂肪酸(2個以上)

 ・オメガ6系(2~4個:植物油全般)
 ・オメガ3系(3~6個:魚・亜麻仁油・えごま油)

飽和脂肪酸は過剰摂取により悪玉コレステロールが増加しやすく心疾患のリスクを高めます。一方、オメガ3系多価不飽和脂肪酸は中性脂肪低下や抗アレルギー作用、免疫力強化、脳機能の維持など多くの健康効果が報告されています。

洋食を好み肉や乳製品の摂取量が増え、魚を食べなくなった現代の日本人では、「飽和脂肪酸=控えたい脂質」「オメガ3脂肪酸=摂りたい脂質」と考えられ、肉と魚のバランスを整えることが大きな課題です。

■タンパク質:体づくりの材料、(補助的な)エネルギー源

タンパク質は体づくりの材料として最も重要な栄養素です。人体には約3万種類のタンパク質が存在するとされ、筋肉・皮膚・肝臓などの各臓器から免疫物質・酵素などまで、体のほぼ全てのパーツがタンパク質からできています。タンパク質はアミノ酸が多数結合してできた巨大分子で、食品中のタンパク質はアミノ酸にまで消化され小腸から吸収されます(正確には、アミノ酸の他、アミノ酸が2個および3個結合したジペプチド、トリペプチドの形でも吸収される)。

人体に存在する3万種類のタンパク質は20種類のアミノ酸から作られています。体内の各組織はそれぞれのペースで常に新陳代謝(古いものが新しいものに徐々に入れ替わること)が行われているため、その材料となるアミノ酸は体内に一定量ストックされている必要があります。

新陳代謝により古いタンパク質から分解されて生じたアミノ酸の一部も再利用されますが、それだけでは足りないため、毎日食事からタンパク質を摂取して体づくりの材料となるアミノ酸を補充しなくてはいけません。20種類のアミノ酸は、体内での合成量によって以下のように分類されます。

①必須アミノ酸:体内で合成できないため食事からの摂取が必須。全部で9種類 
②非必須アミノ酸:体内で合成することができる。全部で11種類

必須アミノ酸が体内で不足すると人体のタンパク質づくりに支障が出てしまうため、食品中のタンパク質に全ての必須アミノ酸が十分量含まれているかどうかが、効率の良いタンパク質摂取法を考える際のポイントとなります。

一般的に、動物性食品中のタンパク質は全必須アミノ酸がバランスよく含まれているため効率がよく、植物性食品中のタンパク質は含有量が少ない必須アミノ酸があるため動物性食品と比較すると効率は落ちがちです。

しかし大豆のタンパク質は例外で、動物性タンパク質と同様に全必須アミノ酸がバランスよく含まれています

このように「材料」として体づくりの要となるタンパク質 (アミノ酸) ですが、例えば体内で糖質が不足した場合などには、1gあたり4kcalのエネルギー量を生み出す補助的なエネルギー源として働いたり、糖の合成材料として使われたりもします。

したがって、タンパク質摂取量の不足だけではなく、糖質摂取量が不足した場合にも体づくりに支障が出やすく、その影響をもっとも受けやすい組織が筋肉となります。

いかがでしたか?今回は栄養素における基礎知識をまとめてみました。

今後はここで紹介した用語仕組みを踏まえながら各テーマについて深堀りしていきたいと思います。