第6回「筋育栄養学」の概要紹介(前編) 

竹並恵里 博士
東京大学社会連携講座 特任研究員
博士(学術)
管理栄養士
健康運動指導士
……
詳しいプロフィールはこちら

「筋育学ってどんな意味?」の講座でもお伝えしたように、筋育には「運動(筋トレ)+栄養+休養」の三位一体で取り組むのが効果的です。

「運動+栄養+休養」は、健康づくりの基本3要素でもあるため、筋育に励んでいるうちに、いつの間にか将来の健康リスクも減っている、そんな嬉しいことが可能になります。

しかしそこで気をつけたいのは「栄養」に対する取り組み方です。

せっかく頑張っているのに、効率の悪い方法になっていたり、逆に健康を害することになっていたりすることが実は多くあるのです。

そうならないために是非活用していただきたいのが、これから皆さんにお伝えしていきたい「筋育栄養学」

今回はまずその概要をご紹介しましょう。

筋肉の材料は確かにタンパク質だけど…


筋肉の超回復を促し、筋肉づくりを進めるためには、まず筋肉の材料となる栄養素が必要です。

筋肉の構成成分を見ると、その約75%は水分ですが、残りのほとんど(全体の約20%)はタンパク質です。

このため、「筋肉づくり=タンパク質」という考えはすでに一般常識にもなりつつあり、食事面で筋肉づくりに取り組もうとする場合、多くの方が「タンパク質」の摂取を意識されます。

確かに、筋肉づくりにタンパク質は必須です。今ある筋肉を維持するため、また筋肉量を今よりもさらに増やすために必要な一日のタンパク質摂取量の目安が、国や様々な学会から提唱されています。

タンパク質の摂取量がこれら基準値よりも少なければ、当然筋肉を育てることはできませんし、場合によっては加齢による筋肉の減少(サルコペニア)を加速させてしまう一因にもなります。

そこでまずは、自分の筋肉を維持するため、さらに育てるために、一日に何gタンパク質を摂取したらよいかを知ることが、筋肉づくりの栄養を考えるファーストステップになるでしょう。

効率の良い筋肉づくりのための栄養学とは?


しかし、一日に必要なタンパク質摂取量を満たすだけでは効率の悪い方法で終わってしまう可能性があります。

一日に必要な量を知ったら、次はそれをどのように摂取すべきか(配分やタイミングなど)を考えていくことが必要です。

現代人の食生活では、一日の摂取量が十分でも、この辺りに問題がある人が多いことが懸念されます。また、タンパク質さえ摂っていれば筋肉づくりはOKかと言えば、そんなシンプルな話でもありません。

実は、タンパク質が効率よく筋肉づくりに利用されるためには、様々な条件をクリアする必要があります

例えば、①エネルギー摂取量(特に糖質からのエネルギー)が十分に足りているか、②タンパク質の代謝に必要な栄養素群や、③タンパク質の合成反応を促す栄養素群が不足していないか、などです。

したがって当然、タンパク質以外の栄養素の摂取も考えなくてはいけません。特に①の条件が満たされないために、タンパク質摂取量自体は十分でも筋肉づくりがうまく進まないというケースは多く見受けられます。

また昨今流行っている極端な糖質制限が、サルコペニアの進行を加速させる一因になってしまっている可能性も考えられます。

この辺りについては、各栄養素の働きや代謝経路、相互作用などを知ることで理解が深まるため、今後詳しくご紹介していこうと思いますが、このようなことを学ぶのが「筋肉づくりのための栄養学」となります。

続き……第6回「筋育栄養学」の概要紹介(後編)