第1回 筋肉と健康(後編)

石井直方 博士
東京大学名誉教授
東京大学特任研究員
東京大学社会連携講座 講座長
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筋肉と健康(前編)の続き……

早期の筋肉チェックとトレーニングが大事


サルコペニアになりやすい下肢・体幹の筋肉では、筋肉量の減少が30歳くらいから徐々に起こり始めます。

特に、大腿(前面)、殿部、腹部、下背部周辺の筋肉は、普通に生活していても30歳から80歳までの50年間で約半分にまで減ると報告されています。

したがって、なるべく若いうち、遅くとも中高年期から対策をしておくことが有用です。

そのためには、まず自身の筋肉の状態を知る必要があります

気付かないうちに、平均的なレベルより筋力が低下しているかもしれません。あるいは、無理なダイエットなどによって筋肉量が標準より減ってしまっているかもしれません。

現在ではあまり問題にならないレベルであっても、これらは将来的に健康寿命を短縮する要因になってしまいます。

筋肉の量や機能を正確に測定することは容易ではありませんが、簡易的な体組成計を用いた計測や、「椅子座り立ちテスト」のように簡便な測定の結果を総合的に分析することで、筋肉の現状をスコア化しチェックすることが可能です。

現在、私たちの社会連携講座ではそうした方法の実践研究を行っているところです。

これまでの多くの研究から、サルコペニアの予防・改善には筋力トレーニングが最も効果的なことが示されています。

したがって、筋肉量の減少や筋力低下の兆候があれば、年齢にかかわらず筋力トレーニングを行うのがよいといえます。

一方、筋力トレーニングには多様な方法があり、万人にとってベストな唯一無二のものはありません。

個人の筋肉や体力の状態、疾患の有無、トレーニング器具や設備などの環境要因に応じ、適切な方法を選択する必要があります。

体力のない方や高齢の方が自宅で無理なく行え、しかも効果が大きいという点でお勧めする方法は「スロートレーニング(スロトレ)」ですが、その詳細については次回にご紹介しましょう。